はじめに、私は原子力発電所は必要だと思っています。
ただ、賛成論の中には、賛成派の私でも納得しかねるような無茶な賛成論が数多くあるので、ちょっと気になったので、こういう無茶な賛成論にツッコミを入れようと思った次第です。
以前にこれ系のネタは書かないといいましたが、嘘になりました。すいません。
なお、わたしは過去に9年ほど火力発電設備の定期点検や設備のリプレースを扱う営業をしていましたが、決して専門家ではありませんので間違いもあるかもしれません。
原発は車より安全か?
池田信夫 blog : 自動車や石油火力は原発より危険である – ライブドアブログ
理解不能。
毎日ニュースで報道されていることのほんの一部でもご存知の上でこういうことを書けるのは、まさにご自分の近くに原発がないからではないでしょうか?
それに、この記事で使用している数字のソースを調べたんですが、池田氏はWHOからの引用と書いていますが、引用元は個人のブログであり、そのブログにはソースをはっきりとは書いていません。
(WHOであるらしきことは書いてありますが、本人の自己申告のみ)
少なくとも個人のブログ上に掲載されたデータを使っており、そのブログ上には明確なソースが記されておらず、論文で言う”孫引き”という反則技を使っていますので信用に価する情報ではありません。
安全ではないものを希薄な根拠で安全というよりも、リスクを認めた上で安全にコントロールできるか否かを模索しないと何も得られません。
原発は発電量が大きい?
これも正しいようで正しくないと思います。
たとえば東電管内の発電所を出力が大きい順に並べると以下のようになります。
なんだ、火力発電所って結構やるじゃん。そう思った人も多いのでは?
これを面積あたりの出力にしてみると以下のような結果が。。。
実は面積あたりの出力に換算すると最新鋭の火力発電所は原子力発電所の3倍以上の出力があります。
(増設のための予備の土地が広大なのかもしれませんが。。。)
ですから、単純に出力だけで話をするのはやはり説得力がないと思われます。
それに、政府も電力会社も出力が大きいことを理由に原子力発電所が必要であるとは言っていません。
(過去には言ってたかもしれませんが、少なくとも現在ではネット上にそういったソースは見つかりません。)
反対するなら原子力を使うな?
これもかなり乱暴な意見。なぜかというと需要家には電気が何で作られているかを選択する権利がないので。
それに、この理屈も、原発の賛否に関する公式な議論の場では論じられることはないと思われます。
議員先生や電力会社の幹部が国会等で「原発に反対なら電気を使うな」って言うと思います?
重ねて言いますが、公式な議論の場で取り上げられることがない意見は、存在しないのと同じです。
居酒屋での雑談程度におさめておきましょう。
原発はコストが安い?
これについてもいろいろな意見があるようです。
たしかに化石燃料よりも燃料費は安定しているようですが、今回のような事故に対する補償や廃炉や廃炉後のメンテナンス費用なども含めると、コスト高になったとしても不思議ではありません。
また、上述した面積あたりの発電容量から見ても、ほんとうにコストが安いのかどうかは、怪しいと感じます。
しかし、ここで重要なのは、政府や電力会社は単にコストが安いだけではなく、「発電コストにしめる燃料費の割合が低いから必要」と説明していることです。
つまりコストが安いかどうかよりも、燃料費が安いことが重要なんです。
後述しますが、これには大きな違いがあり、よく理解する必要があります。
ここまでのまとめ
テレビやインターネットを通して多くの有識者が原子力発電所の必要性について述べています。
しかし、ここまでご説明したとおり、説得力がないものも多く見受けられます。
政府や電力会社が、なぜ原発が必要と言っているのかをもう一度再確認し、彼らが言ってることと言ってないことを、きちんとわけて理解しましょう。
原子力発電所が必要なわけ
各電力会社のホームページをよく読むとわかりますが、原子力発電所の必要性は、以下の二つに集約されます。
- エネルギーの安定供給(より専門的にはエネルギーの安全保障)
- 温暖化の抑制などの環境保護
エネルギーの自給率
ご存知のとおり日本は非常に石油資源が乏しい国で、エネルギー資源の96%を輸入に頼っています。

しかし、原子力発電をエネルギーに含めると輸入割合は82%まで下がります。
では、原子力発電所をやめてエネルギー資源の輸入にたよるとどうなるか?そこにはまさに現実的な危機が存在しています。
いまそこにある危機 – イランの核問題
すでに多くの方がご存知だと思いますが、イランに核兵器開発の疑念が持たれており、アメリカではイランへの経済制裁を行っています。
一方でイランはこれに反発してペルシャ湾を封鎖するとことあるごとに言っています。
地理に詳しい方はご存知かもしれませんが、このペルシャ湾の出口であるホルムズ海峡はイランの目の前にあり対岸までの距離はわずか33kmしかありません。

そして、日本の中東からの石油の70%がこのホルムズ海峡を通っているのです。
http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data2004.html
日本では、オイルショック以降、中東への依存度を減らすためにインドネシア、メキシコ、中国などへの分散を図り1987年には68%まで依存度を低下させることができました。
しかし、その後のアジア各国の経済成長による消費量の増加により、ふたたび中東への依存度が上昇しはじめ、現在は原油の輸入量の90%を中東に頼っておりオイルショックの頃の依存度を上回っています。
政府はこういった状況に危機感を感じており「エネルギーの安全保障」の確保のための対策の大きな柱として、発電コストに対する燃料費の割合が低い原子力発電を推進しています。
つまり、「コストが安い」ではなく「燃料費が安い(出力あたりの輸入への依存度が低い)」が重要なんです。
環境問題
原子力発電所はクリーンエネルギーとして国際的に位置づけられており、地球温暖化に対する対策として有効と考えられています。
今回の震災による事故の結果生じた環境への影響によって、これに関しては意見がわかれると思いますが、少なくとも政府は震災前にはそう考えており、国際社会でもこの流れは暫く続くと思います。
地球温暖化がウソか本当かには関係なく京都議定書は実際に発効されており、そこでの約束を果たすための有効な手段として原子力発電は重要視されています。
太陽光発電や風力発電は?
太陽光発電などの自然エネルギーは環境負荷が小さいというメリットがあり、政府や電力会社は積極的に導入する姿勢を崩していませんが、気候等に左右され出力も小さいために基幹電源になるとは考えられていません。
これは個人的な意見ですが、電気は貯めることができず生産と消費が同時に行われるため、仮に自然エネルギーによる発電で十分な発電量があったとしても、気候に恵まれない際のバックアップ電源としての発電所は必要だと思います。
ただし、それでも輸入に対する依存度を下げてエネルギーの安全保障を確保するという意味では大いに期待できる技術であり、技術的な課題が解決できるのであれば原発なんて必要ないと思います。
まとめ
今回の記事は、原子力賛成派の人にこそ正しい理解をしてほしいとの願いで書きました。
私の理解では、事故を起こした以上、現存する原発は安全ではなかった。
実際に世界中が大騒ぎだし、避難指示が出て福島県民のみなさんが実際に辛い思いをし、東電の偉い人も謝ってます。
そして東京電力は過去に臨界事故を含む複数のトラブルを隠蔽していたという前歴があり、どこまで信用していいのかわからないのが現実です。
でも国際的な情勢の中でエネルギー供給には現実的な危機があって、そんななかで原発を今後コントロールできるのかどうか?
脱原発しつつもエネルギーが抱える問題を解決する方法はあるのか?
賛成か反対かを先に決めて後から理由を付け足すような議論をするよりも、現実に対処すべき問題を並べて、それを解決するための道筋をさがすような、頭のいい先生たちにはそういう話をしてもらいたいと思います。
最後に、原発の周辺地域で生活するみなさんのことを思うと安易に原発が必要と考えることには違和感も感じています。
被災地のみなさんや原発の周辺で暮らす人達に一日も早く安らかな生活がもどることをお祈りしています。
参考
http://www.fepc.or.jp/faq/necessity/index.html
http://www.tepco.co.jp/nu/qa/index-j.html
http://www.kyuden.co.jp/notice_sendai3_faq_necessity.html